2026/8/14
経営企画人材は、なぜ育てるのが難しいのか?
人材育成
経営企画
社外経営企画

「経営企画が必要なら、社内の誰かを担当者にすればいい」
そう考える経営者もいるかもしれません。
営業で実績を上げている人、数字に強い経理担当者、将来を期待している若手社員。優秀な社員を経営企画に配置し、少しずつ仕事を覚えてもらう。それ自体は一つの方法です。
しかし、優秀な社員を配置したからといって、すぐに経営企画の仕事ができるようになるとは限りません。
経営企画という仕事には、他の部署とは少し異なる育成の難しさがあるからです。
各部署ではスペシャリストが育つ。経営企画はジェネラリストに近い
営業部で長く仕事をしていれば、顧客との関係構築や商談、提案、営業管理など、営業に関する経験が蓄積されていきます。
経理であれば会計や決算、人事であれば採用や労務、製造であれば生産や品質管理といったように、同じ部署で経験を重ねるほど、その分野の専門性は高まっていきます。
異動がなければ、各部署の人材は基本的に、その領域のスペシャリストとして成長していきます。
一方、経営企画は少し性質が異なります。
売上や利益といった財務数値だけでなく、営業、市場、競合、人材、組織、投資、事業計画、KPIなど、さまざまな要素を横断して考える必要があります。
営業部門にとって良い判断が、会社全体にとって最善とは限りません。人事、製造、財務についても同じです。
経営企画には、それぞれの専門領域をある程度理解しながら、
「会社全体として、何をどう判断し、何を優先するべきか」
を考えることが求められます。
その意味では、経営企画はスペシャリストというより、ジェネラリストに近い仕事です。
ただし、すべての分野に詳しい万能な人材である必要はありません。
複数の専門領域をつなぎ、それを経営の意思決定に結びつけていくことが、経営企画の重要な役割です。
この「一つの分野を深く学ぶだけでは身につきにくい」という性質が、経営企画人材を育てる難しさの一つです。
私自身も、経営企画に移った当初は何も分からなかった
私自身、約11年間の営業経験を経て、未経験で経営企画の仕事に転職しました。
社会人経験は十分にありましたが、財務諸表を本格的に見るのは初めてでした。
数字を見ても、何を意味しているのか分からない。どこに問題があり、なぜそれを優先して考える必要があるのかも分からない。
経営者との経営会議でも、上司がなぜその質問をするのか、その意図さえ理解できないことがありました。
ある部署で長く経験を積んできたからといって、すぐに会社全体を見られるようになるわけではありません。
私自身が、まさにそうでした。
経営企画には、理論と実践の両方が必要になる
少しずつ経営企画の仕事が分かるようになってきたと感じたのは、2年ほど経った頃です。
その頃には、中小企業診断士の勉強も始め、財務や経営戦略、マーケティング、組織などを体系的に学ぶようになっていました。
一方、実務では、上司が経営者にどのような質問をするのかを聞き、多くの経営者との面談を経験しました。成功している経営者から、経営に対する考え方を直接聞く機会もありました。
理論を学ぶことで、実務で見ていたことの意味が分かる。
実務を経験することで、学んだ理論が実際の経営でどう使われるのかが分かる。
この両方を繰り返す中で、少しずつ「経営を見る目」が身についていきました。
例えば、現場から見れば「人を一人増やせば負担が減る」という判断でも、経営者から見れば、人件費だけでなく採用や教育にかかる費用、その後継続して発生する固定費まで考える必要があります。
一度採用した人員を、業績が悪くなったからといって簡単に減らすこともできません。
設備投資、新規事業、値上げ、出店なども同じです。
一方から見れば正しいことでも、会社全体から見ると別の判断になることがあります。
経営企画には、こうした複数の視点を持ちながら、会社全体としての優先順位を考える力が求められます。
そして、この感覚は知識を覚えるだけで短期間に身につくものではありません。
経営企画人材は、実際の経営の中で育つ
経営企画担当者に財務研修を受けてもらえば、経営企画人材が完成するわけではありません。
経営会議に参加させれば、すぐに経営者と同じような視点で考えられるようになるわけでもありません。
大切なのは、実際の経営に触れる経験を積み重ねることです。
会社全体の財務数値や事業別の業績、KPIを見る。経営会議に参加する。課題を分析し、経営者に提案する。そして、決定した施策がその後どうなったのかまで確認する。
さらに、
「なぜこの数字を見るのか」
「なぜ今、この問題を優先するのか」
といった、経営者や上司の判断の背景まで理解していくことも重要です。
結果だけを見るのではなく、その判断に至った考え方を知る。
そうした経験を繰り返しながら、少しずつ「経営を見る目」が育っていきます。
だからこそ、経営企画人材の育成には時間がかかります。
特に中小企業では、会社全体を見る役割を専任で置くことが難しく、日々の業務をこなしながら、こうした経験を十分に積ませることは簡単ではありません。
ここまで読むと、
「幅広い知識が必要で、実際の経営に触れる経験も必要で、育成にも時間がかかる。それなら、中小企業に経営企画はやはり難しいのではないか」
と思うかもしれません。
中小企業に経営企画は、やっぱり難しいのか?
確かに、社内だけで一から経営企画人材を育て、すべてを任せられるようになるまでには時間がかかります。
専任の経営企画人材を新たに採用することも、中小企業にとっては簡単ではありません。
しかし、ここで考えたいのは、
「経営企画を持つこと」と「完成された経営企画人材を一人用意すること」は、同じではない
ということです。
前回の記事でも触れたように、経営企画は「経営企画部」という部署そのものではなく、会社に必要な機能として考えることができます。
経営者が担う部分もあれば、社内の担当者が担える部分もあります。
そして、社内だけでは足りない部分を、外部の人材に補ってもらうこともできます。
つまり、中小企業だから経営企画ができないのではありません。
経営企画をすべて社内だけで完結させようとすると、難しくなることがある。
そう考える方が近いのではないでしょうか。
だからこそ、中小企業には「社外経営企画」という選択肢がある
経営企画人材を一から育てるには時間がかかります。
しかし、会社の成長や経営課題は、人材が育つまで待ってくれるわけではありません。
事業が増えた。
店舗や拠点が増えた。
数字の管理が複雑になった。
新規事業を進めたい。
経営者自身が、集計や管理、資料作成に追われるようになった。
こうした状況では、すでに経営企画の機能が必要になっている可能性があります。
そこで一つの選択肢になるのが、経営企画の一部を社外の人材に担ってもらうことです。
LIBERTARCでは、このような役割を「社外経営企画」と呼んでいます。
社外経営企画は、社内の人材に代わって、何もかも外部が行うという考え方ではありません。
経営者や社内担当者と一緒に、財務分析、事業計画、予実・KPI管理、経営課題の整理、会議運営や施策の推進など、その会社に足りない経営企画の機能を補っていくものです。
社内に担当者がいるのであれば、一緒に仕事をする中で考え方や分析方法を共有し、徐々に社内で担える範囲を広げていくこともできます。
社内で育てるか、外部に任せるか。
必ずしも、その二つから一つを選ぶ必要はありません。
外部の力も使いながら経営企画を始め、その中で社内の人材も育てていく。
中小企業だからこそ、そんな経営企画の持ち方があってもよいのではないでしょうか。
経営企画人材がいなくても、経営企画は始められる
経営企画人材が育ちにくい理由は、扱う領域が広いからだけではありません。
複数の専門領域をつなぎ、一つの事象をさまざまな角度から見ながら、会社全体として何を優先するべきかを考える必要があるからです。
その力を身につけるには、知識だけでなく、実際の経営判断に触れる経験が必要です。
だから、経営企画人材の育成には時間がかかります。
しかし、人材がいないからといって、経営企画そのものを持てないわけではありません。
まず必要な経営企画の機能をつくる。
社内で担えることは社内で担い、足りない部分は外部の力も借りる。
そして、その仕事を実践する中で、社内の人材も育てていく。
「経営企画人材が育ってから始める」のではなく、「経営企画を始めながら人材を育てる」。
それも、中小企業における経営企画の一つのつくり方です。
